特になんにも思いつかないけれど、今月ひとつもノートを書いていないのが気になるので何か書こうかなと思う。書けない(書かない)のは多分うつがあることと、そのための薬を処方してもらっているからかなあと思う。眠気はしょっちゅう来る。
母親が「部屋を懐中電灯で照らされている」「誰かが玄関から入ってくる音がする」と言うので、これは認知症が始まったのかなと思ってお医者さんのアドバイスもありしばらく一緒の部屋で寝ることにした。そうしたら前の道路を走る車のライトが窓から入ってくる様子と、道路の走行音がまるで部屋の戸を開け閉めするように確かに聞こえることがあるので、これは根拠のあることなんだと母親にも説明した。自分でもドキッとすることが確かにあった。
僕は人と一緒に眠るのが苦手だ。保育園のときからお昼寝の時間が来ると皆がすっかり眠っているのに自分だけ眠れない。それで保母さんに目をみつめてもらいながら背中をさすってもらっているうちにようやく眠れることが多かった。高校生のとき、受験合宿が一週間ほどあり、お寺の坊に泊まるのだけれど、あれはしんどかった。まず親しく話せるような友達がいないので身の置き所がなかったのと、おなかをこわしたのと、それとやっぱり夜になかなか眠れなかった。皆が寝静まるまでガラスのむこうに見えるお月さまを眺めながらようやく目をつむり、眠ったと思ったらだいたい自分が一番に起きていた。「この人は僕が目を覚ましたらもう起きている」と話す子がいた。
話を戻すと、なので母親と同室で寝るのは僕にとっては少し居心地がわるいところがある。最近はゆっくりと眠りたい時には週のうち二三日は自室で寝ている。母親には軽い喘息の症状があるのと無呼吸症候群(こちらはそれをしてもあまり効果がないということで今は機械は使っていない。)がある。それで寝かけるときに咳などするとなぜだか知らないけれど犬がそれを気にして母親のベッドまで行き、前足をかけてその顔を覗く。その高さはちょうど母親の寝ている顔のあたり。たまに前足を伸ばしてくるという。以前はそんなことはしなかったと思うけれど、父親が一緒に眠らないようになってからそういうことをし出したように感じる。母親によればそれは母親のからだを心配して「お兄ちゃん(僕)を呼んできてやろうか?」と尋ねているようだという。
ほんまかいな?と思って母親と犬と自分とで寝ていると、確かに母親が咳をし出すと犬がふっと顔を上げて、それが続くようだとベッドまで行き母親の顔を覗き込んでいる。「大丈夫、大丈夫」と母親が言うと僕の足下の自分の布団まで戻って来てまた寝ている。けれど数度だけ戻って来て僕のベッドを前足でがいがいとこすったり、鼻で掛け布団をあげる仕草をして、まるで「なんとかしたれよ」と言っている感じの時もあった。僕がそこで寝ない時には犬がベッドにあがって寝ている。
人の顔に影が
この間、犬を散歩させていたら前から歩いて来た人に突然「こんにちは」と挨拶をされたので驚いてそちらを向くと父親がいた時に懇意にしてもらっていたすぐ近くに住む人だった。あわててこちらも挨拶をしたけれど、そんな時に自分の障害特性を感じる。見えている範囲が狭いのと、よほど意識していないと人の顔にまるで影がかかっているように見える。これまでも知っている人と通りすがりに出会っても気づけないことが多かった。あとでふとその人だという感じがして、振り返ってみてそうだったということが何度もある。そいう時はとても気まずい。