先のことを話すとき、父親はたまに、「(僕が)珍しい花木なんかをネット販売することなんかも考えられるで」などと言うことがある。僕は植物を美しいと思う気持ちはあるけれど、それを一から育てて人に分ける努力をする気持ちは今のところ湧かないから、「それにはあんまり興味がないわ」と、ほぼ聞き流している。実際、できないと思う。
僕が小さな頃から、両親とも花木にはずっと興味をもってきたのは知っている。それは、「ガーデニング」といったものではなく、また、昔からある「盆栽」といったものでもない。自分たちだけで満足するためのそれではなくて、できれば育てた花木が人の手に渡ったり(売れたり)、分けることができたりといった、「実用」的な植物栽培を、両親はしてきた。
僕が小学校に入る前までは、小さな温室をたててサボテンを育てていた。けれどそれは一晩の間に泥棒にあったことで諦めたらしい。自営をしていた頃には、植物の種子を菓子店店頭のスタンドに並べて売っていた。僕が高校あたりまでは、年末が近づくにつれ農家からたくさんの葉ボタンを仕入れてきては鉢に紅白に並べて植え、注文を受けるたび届けていた。
10年ぐらい前だったか、家の小さな余り地に、売る為にではなく紅白並べて葉ボタンを敷き詰めるように植えたことがあって、「珍しいことをしているな」と思った記憶がある。実際それらを人に分けている様子もなかった。
僕は、部屋の中にポトスやパキラのような観葉植物を置いてはいるけれど、それも水さえあげておけば勝手にどんどんと育って何年も緑を保ってくれているからこそで、自分が種子から花を育てようという気持ちはあんまり起こらない。けれど、見る分にはきれいだと思ったり、なんとなく神秘的な感じがしたりして魅力を感じたりするからその様子を写真に撮ったりはする。
今はしんどいのと、平日動いていると干渉してくる人なんかもいて嫌なので中断しているけれど、家の余り地の整備をまた始めることがあれば、あんまり世話をかけないでもいいような種類の植物を育てる場所を作ってみるのもいいかも知れない。