
春にはこの土地のメインイベントであるお祭りが行われます。この祭、「ストーリー」がよくわからなくって、なんでも一度湖越しに神様を迎えに行き、その神様をお山に迎え入れ、山から若い衆が御神輿をかつぎながら激しく走り降りて、神社の境内でなにやら神輿どうしごにょごにょ。その後御輿置き場に複数台並べたものをガッタンガッタンします。そのときまた火が使われて人が走り回る。それらが一段落つくと、各町から選ばれたお稚児さんが花飾りを頭の上に掲げてもらいながら満開の桜の元をお付きの人々と練り歩きます。それと前後してなんだかわからないけど若い衆が参道をわらわらと歩き回り時には喧嘩ごしになることもあるとかないとか。まあ、とりあえず最寄りのお寺の前に警察の拠点が置かれます。
でも僕が子どもの頃は、もっぱら参道沿いに並ぶ、りんご飴だとか綿菓子だとか当て物だとかのテントの店のことしか頭にはありませんでした。祭りなんか観ていない。当て物なんかたいていだましで、すばらしい景品が一番目立つところに置いてあるけれど、それは必ず当たらないようになっているし、店のおっちゃんもひどいもので最初からあたりを入れてなかったりする。そんなことは子ども心にもわかっていたけれど、ハズレでもたいてい何かはくれるので特に損をした気もしないのです。
小学校に上がる前に僕が必ず買っていたのは、空気のポンプを押すとぴょんと跳ぶカエルのおもちゃと、本物のヤドカリでした。なぜかこのセットが「定番」でした。金魚すくいとかは周りに人がいて恥ずかしくてできず、綿菓子とりんご飴は「歯が悪くなる」という理由で母親から買わないように強く言われていたので、いまだにほとんど食べたことがありません。まあ、今さら「ぜひ食べたい」というものでもないですが。
今夜はまず神様をお迎えに行くということで、各家の前で火を焚いて榊が降ろされていくのを見守る行事があったので、外に出て火を焚きました。こんなことをするのも久しぶりです。今年はこの町内の役をうちがやることになって、父親ひとりに任せるのもわるいかなと思っています。体力的に無理なものもある。ただ、僕は近所付き合いというものがこれまでほぼ出来てこなかったので、こうした行事があっても外へ出ることもなかったのですが、一度出てみようかと。僕に印象をわるくしている人もいるのであまり近寄っても来てもらえなかったりするのですが、そこは置いておいて、今は外で火を炊くことが禁じられていてたき火というものが出来なくなってしまったので、ある意味、たき火感覚が味わえたのは面白いものでした。子どもの頃は裏の土手でよくたき火をしたし、その煙が必ず自分の方へ来る、と騒いだ。ああいう体験はしておいて悪くないものだと思います。